マルク・シャガール作品の不思議

シャガールは実に不思議なアーティストだ。

西洋美術をかじると必ず出てくる彼の作品。
たとえばあのユーレイのような人間らしき物体が空を飛んだり、ポワンとどこかに存在している絵。主がわからない。どれがメインなのか。それはもはや人物画とは呼べない。
まるで人らしき物体を入れ込んだ風景画のようではないか。

ザンクト・シュテファン世界中で人気の画家と言って間違いない彼に対し、私はユーレイみたいな力の抜けたあの作風ゆえにずっと好きになれなかった。
でも、なぜかドイツ旅行を組み立てているときに、シャガール作のステンドグラスがあるザンクト・シュテファン教会をしっかり旅程に入れ込んだ。自分でもシャガールの作品を見たくなった理由がよくわからぬまま、そのステンドグラスを見るためだけにマインツを旅程に組み込んだのだった。

ドイツ唯一、シャガールのステンドグラスがある教会

ドイツ中西部ラインラント‐プファルツ州の州都マインツは、ライン川とマイン川の合流地点という地の利を生かし、交通の要所として、宗教都市として栄えた中世都市。

実はマインツにあるザンクト・シュテファン教会は、ドイツで唯一のシャガールのステンドグラスを有する教会なのだ。
そういうわけで、外国人の訪れが後を絶たないのだとか。地元の方たちも、ザンクト・シュテファン教会を誇りに思っているのだと聞いた。

ザンクト・シュテファン

ドイツ観光局 マインツについては以下を紹介する。場所の地図もあり。
>> http://www.germany.travel/jp/towns-cities-culture/towns-cities/mainz.html

静謐な青の空間

私は何の予備知識も入れず、シャガールのステンドグラスを感じるためだけにここに来ていた。それも、好きになれないはずのシャガールを。
だから、ピュアな感覚で教会に踏みいっているはずだ。

ザンクト・シュテファン

何かが違う。
柔らかな青い光に包まれた静かな空間。

ザンクト・シュテファン いろいろな教会でステンドグラスを見てきたが、どこの教会のステンドグラスも似たり寄ったりだった。
でも、ここのステンドグラスは、明らかに他と違う。
なぜなのだろうか。

ザンクト・シュテファン

ザンクト・シュテファンザンクト・シュテファンただ単に、青が多いということではない。

そうか。そうなんだ。シャガールは直線を使わなかったのだ。
お約束(?)のユーレイはたくさんいた。
空を飛ぶユーレイが。
神の世界を描いても、アダムとイブを描いても、ユーレイが空を漂っている。
中世の画風ともいうべき、遠近法度外視の2D画という意味では一致しているが、シャガールの絵は、登場人物が脱力していて、余計な力が入っていないようだ。

ザンクト・シュテファンザンクト・シュテファンザンクト・シュテファン誰もが静かに椅子に座り、ぼんやりしていた。
私も両肩から重たい荷物をおろし、青に包まれてしばし脱力状態になった。

聖書の世界を描き、神に捧げた

ここのステンドグラスは、新約・旧約聖書を題材に描かれている。
アダムとイブの物語から始まり、モーゼの十戒、受胎告知、最後の晩際、キリストの磔など、彼独自のタッチは絵画と同じ、どこまでも柔らかで曲線的。
シャガールのステンドグラスに直線は見当たらず、ぼんやり見つめていると肩の力が抜けて、水の中に漂っているような気さえする。

ザンクト・シュテファンザンクト・シュテファン

1978年から製作を初め、彼が亡くなる1985年までに、教会前方部分の9枚のステンドグラスをデザインした。
シャガールは90歳を超えており、晩年の力作。

癒し、圧倒、脱力、感動、浄化。
写真ではそのパワーの10分の1も表現しきれないが、どれも真実だった。

これを見るためだけにマインツを訪れる人も多くいる。
数年前、パリのオペラ・ガルニエを内部見学したとき、リハーサル中ということでシャガールの天井画を見損ねたことがある。そのときはたいして残念とも思わなかったが、今となっては たまらなく惜しい気がする。

嫌いだったものが好きになる。シャガールにはそんな凄い力がある。
束の間、日頃できないところまで脱力をやってのけたような。そんな良い時間だった。
ありがとう。

Others

撮影

望遠カメラでなければ、寄り写真は難しいかもしれない。あそこまで絵柄をアップしたいならば、望遠を持参すべきと思う。また、三脚は持参しなくてもなんとか撮れるだろう。

アクセス雑感

私はリューデスハイムに宿泊して、ちょっとマインツに立ち寄るという選択にした。マインツ宿泊も考え、Hotelサイトをのぞいてみたが、しっくりこず、教会を訪れるだけにした。下記は川下りをせずにライン川を楽しめる方法を紹介しているので、興味のある方はそちらへ。
リューデスハイム (Rüdesheim am Rhein) からは近いのだが、列車の本数はさほどないので、DBサイトで時刻検索をしておくのをオススメする。

>>ライン川とリューデスハイムの葡萄畑

旧市街地に建つザンクト・シュテファン教会(聖シュテファン教会)は、マインツ中央駅 (Mainz Hbf) から徒歩15分ほどのところにある。もしかすると、もうちょっと歩いたかもしれないが。
マインツ中央駅は大きな駅だった。

マインツ中央駅

ガイドブックにも載るようなところなので、やはり規模としても、観光地としてもそれなりのものがあるのだろう。
しかし、DB駅構内の案内所には、英語の地図は置いていなかった。
ちなみに、マインツのインフォメーションセンターは旧市街地の川沿いまで行かねばない。

駅を出て真ん前の大通りがメインストリート。ななめ右方向が教会の場所である。
通常だと、トラムに乗るのがわかりやすいだろうが、私は時間があったので歩くことにした。問題なく歩ける距離であったが、教会は高台にあるので、間近になると少し上り坂になる。
一番わかりやすいのは、トラムのラインに沿って行くことだろう。
地図とにらめっこしていたり、まごついていたら、たいていアツイお節介をするドイツ人が “May I help you?” と助け舟を出してくれるので心配はいらない。英語はおおむね通じる。