山奥の神社でありながら人々の崇敬が絶えない神社

都会から延々交通機関を乗り継ぎ、くねくねの山道をバスに揺られて辿り着いたら、そこは霧の中…。山奥、人里離れた別世界、それが三峯(みつみね)神社の神域である。
たまたまなのか、何なのか、私が訪れたのは梅雨入り初日で、数メートル先も見えない視界不良状態。霧の山道を危なげなくバスを走らせる運転手の、その素晴らしいドライヴィングテクニックに舌を巻きつつも、「どエライ日に来たもんだ」と心の中で嘆いていた。
すると、神職の方がそれを見透かしたかのように「三峯神社は頻繁に霧でけぶるので“霧の三峯山”とも呼ばれていまして、霧のお姿もまた、三峯神社の神様のお姿」だとおっしゃった。

三峯神社そんなお話を聞いた瞬間、いつもの参詣気分や既成概念はどこかへ飛んでゆき、物見遊山とは違う感覚でそこに立つことになった。
下界で暮らす排気ガスまみれの自分からほんのひととき引き離され、海抜1,100mの山の上で、霧に身をやつした神様に内包されていくような特別な感慨に浸った。三峯神社

三峯神社

>>三峯神社 http://www.mitsuminejinja.or.jp/index.htm

オオカミ信仰の地

三峯_オオカミ

三峯神社では、オオカミ信仰があり、狛犬ではなく、山犬さまが神域を阿吽の呼吸で守っている。 オオカミが日本武尊の道案内をし、その勇猛、忠実さから、使い神に定められたと伝えられている。

余談だが、以前、テレビ番組でオオカミについてこの三峯神社を取り上げていた。
オオカミは夜行性であり、人に近寄らないのが常。本来、オオカミが人を襲うことはほとんどなく、むしろ害獣を減らし、人間にとって良い動物なのだとか。
実は、世界的にオオカミ=ワルという印象を植え付けた、ひとつの物語がある。誰もが知っている『赤ずきんちゃん』だ。
おばあさんが食べられちゃう、あの物語によって、世界的に絶滅にまで追い込まれるとは悲しすぎる。

北海道にもかつてはオオカミがいた。
明治時代に開拓の妨げになるとして根絶やしにされ、人間は食われる恐怖から解放されたから、めでたしめでたしだと思われた。が、生態系を壊した人間は、天敵のいなくなったエゾシカの過剰繁殖を許し、作物を荒らされて、農家らはその損失に頭を抱えることになる。
現在、エゾシカの頭数が異常に増え、エサになりそうなものを手あたり次第食い荒らしたために、山は荒れ、多くのエゾシカが飢餓で倒れている。
仕方がない…そう言って猟師が鉄砲を打ち、シカの数を減らす活動をしている。それに対して「殺してはかわいそうだ」という人もいる。牙を持っているものは根絶やしにして良く、草しか食べないものへの殺傷は良くない。そういうことかもしれないが、我々の食卓には鶏やら魚やら、いろいろ並んでいると思うのだが。
一方、生態系を過去に戻そうとオオカミを再導入することを提案している人もいるが、牙を剥かれた場合の恐怖から反対の声も多い。海外では絶滅地域の再導入を始めているところもある。

話がそれたが…。
犬はオオカミが飼いならされて家畜化されたものとも言われている。イエイヌが犬。ヤマイヌがオオカミのこと。
犬は、人間の友だちということになっているが、「そんな彼らも何かの拍子に牙を剥いているではないか!」と考えるが、どうなのだろう。
オオカミ=大神とも書かれている。とすれば、やはりオオカミの神使(しんし)説は妥当かもしれない。

祈祷

三峯神社

なんときらびやかな社であることか。

三峯神社三峯神社

外観が独特なら、ご祈祷もかなり独特なのをご存じだろうか。
通常だと、神職の方が祝詞を奏上するスタイル。お神楽がある場合は、笛や笙などの楽器やお鈴がでてくるくらい。ところが、こちらは、神職の方が祝詞を奏上するのは同じでも、ドン、ドン、ドンとひたすら太鼓を叩きながらのご祈祷なのだ。
どうかすると、祝詞のお声が聞こえないほどに、ず~っとドン、ドン、ドン。それでも、祓うパワーは関東でも屈指の神社と言われている。

三峯神の湯

三峯神の湯は海抜1,100mにある温泉で、境内に温泉が湧いている。拝殿の隣というか、続きに、興雲閣という施設があり、宿泊と日帰り入浴を提供している。
500円で入浴が可能なので、ぜひここで旅の疲れを落としたいところ。

神の湯

興雲閣 客室/全室和室(内トイレ・内風呂・内洗面所なし)
客室数/新館48部屋、別館11部屋

泉質は、まったりして少ししょっぱい。 入っていて、体がほぐれて気持ちよさでうっとりするほど、とってもいい泉質だ。
「源泉名を大滝温泉三峯神の湯と名付けられたこの温泉は、ナトリウム-塩化温泉で、含有成分の種類が多く、また、含有量も多いことから成分的にも優秀と認められ、関東でも1、2を誇る温泉と自負しております」とか。
大げさではなく、500円でこんなにも安らぎを得てリフレッシュができるなら、入る価値ありだ。

 

あやめ神話では日本武尊がこの地に何かを感じて、国生みの神である伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉册尊(いざなみのみこと)をお祀りしたという縁起がある。
来てみて霧に包まれていたら、それはもう、神様が霧にお姿を変えてすぐそこにいるような気分にさせられる。樹齢1,000年の老杉・古檜をはじめとする大自然に包まれた霊山ならではの魅力もまた、人々を引きつけて止まないものなのだろう。

祈祷を終え、温泉で体を癒している間に霧は晴れていた。束の間、神様がここにいらっしゃっただけで、霧消のごとく去って行かれたようだ。

三峯神社へのアクセス

三峯神社行きバス

三峯神社は、決して交通の便がいいとか、行きやすいところなどではない。
西武鉄道の西武秩父駅からバスに乗ってスリリングな狭い渓谷道をひたすら1時間半ほど進み、しかも平日だと3便ほどしかないので、計画的に行かないと、とんだロスになるような山奥。

西部観光バス 片道75分 930円
>>http://www.seibubus.co.jp/mitsumine.pdf

噂通りの僻地だが、いろんな人の口コミでは「空気が違う」とか「来てよかった」と思える満足感があるようだ。

追記:秩父駅周辺の宿に泊まるなら

私の場合、大阪に朝6時の飛行機で羽田に飛び、それから西武秩父駅まで来るだけで正午。なんと6時間もかかった。一泊しないと厳しいというのがわかっていたので、その日は秩父駅周辺の「旅館 比与志(ひよし)」という宿に泊まった。

そこの朝食に感動したので、紹介したい。
最大の魅力は、朝食!

比与志女将さんお手製の、お料理の数々。口コミでかなり評判がよかったからここにしたのだが、正解。
本当においしかった。
地のものとおぼしき山菜や野菜がいっぱいで、手作り豆腐も美味。
そして、ご飯は秩父のお米キヌヒカリ。

比与志

ロビー

比与志

朝食会場

2つあるお風呂は、貸し切りで入れるのも魅力!トイレ・バスは室内にないけれど、十分だったし、古い建物をセンス良くリノベーションしている感じ。
土地のものを美味しく食べることができたのが、私にとっては何よりだった。

比与志

芝桜で有名な羊山公園のすぐ近くの宿